タレントのラブリさんが書類送検されていたというニュースが飛び込んできました。
ラブリさんご本人は書類送検されたのと同じ月に”インスタグラムで意味深”な投稿をしていたとのこと。
”強制わいせつ”や”書類送検”…耳慣れない法律用語ですが、細かく見ていくと事件の片鱗が分かりそうです。
迷惑防止条例違反じゃないの⁉
こうした事件のときに強制わいせつと並んで耳にするのが、迷惑防止条例違反。
痴漢などの犯罪のときに新聞で見かけることが多いですね。
いかがわしいことを処罰する法律であることは分かりますが、この二つは何が違うのでしょう?
条文から見ていこうと思います。
(卑わいな行為の禁止)
第4条 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安を覚えさせるような方法で、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
(1) 着衣等の上から、又は直接他人の身体に触れること。
(2) 着衣等で覆われている他人の下着又は身体(以下「下着等」という。)をのぞき見ること。
(3) 着衣等で覆われている他人の下着等を撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置すること。
(4) 前3号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
法律の名称もさることながら、かなり恐い文言が並んでいます。
盗撮や抱き着きなどを処罰する条例であることが分かりますね。
一方で強制わいせつはどうでしょうか。
強制わいせつ(刑法176条)
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
引用:e-Gov法令検索
迷惑防止条例と比較すると、「暴行又は脅迫」という要件が加わっていることが分かります。
迷惑防止条例違反と比較して重い犯罪のイメージですね。
実務上、痴漢などの事件でも衣服の上から触った場合は迷惑防止条例違反、素肌に触れると強制わいせつ、と言われています。
もっともこれは一つの基準に過ぎません。
実際には、加害時間の長短や触った体の部位などを総合考慮して判断されます。
いずれにしても、強制わいせつの方が迷惑防止条例違反よりも重い罪であることは間違いありません。
(条例違反が「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」であるのに対し、懲役刑まであることからも明らかです。)
今回の事件があったと言われている和歌山県でも、上記のとおり迷惑防止条例は施行されています。
県警があえて刑法で処理したということであれば、やはりそれなりの事件性があったのではないでしょうか?
逮捕はされないの?
そうすると次に気になるのが、”書類送検”という言葉です。
何か犯罪が起きると”逮捕”が思い浮かびますが、ラブリさんは逮捕はされていない様子。
この二つはいったい何が違うのでしょうか?
逮捕とは被疑者の身柄を拘束して、引き続き短時間の拘束を続けることをいいます。
取調べを有効に実施するために先立って行われる刑事手続です。
一方で「書類送検」とは、警察が取り調べた後に書類のみ検察官に送致する手続きのこと。
(ざっくりいうと、「起訴するかどうかは検察で判断してください」と警察が検察に事件を委ねる手続きです。)
逮捕のような身柄拘束は伴いません。
ちなみに逮捕の要件の一つとして、「逮捕の必要」性が掲げられています(刑事訴訟法199条2項但し書き)。
これは、被疑者の逃亡や証拠隠滅の可能性を指します。
逮捕が取調べを有効に実施するに先立っての手続きですから、取調べを問題なくできると判断された場合にはあえて身柄拘束する必要は無いということですね。
したがって、身柄拘束の有無が犯罪の軽重を左右するものでないことは注意が必要です。
迷惑防止条例ではなく強制わいせつで書類送検された本件。
県警の取り調べ後に釈放されたわけでないことからすると、やはり何かあったのかな?と思わずにはいられません。
そして気になるのがラブリさんご本人のインスタグラムの投稿…
一日も早く真相が明らかになって欲しい。
そう願わずにはいられない事件ですね。
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