最近よく耳にする言葉のひとつに「煽り運転」があります。
これは、目の前にいる遅い車や高齢者マークの車に対して車間距離を詰めて相手に恐怖感を与えるような運転のこと。
そんななか、”煽られ運転”という耳慣れない言葉が飛び込んできました。
いったいどんな運転だったのでしょうか?
当時のニュース映像では、トラックの前に現れた白い車(トヨタのアクア?)がブレーキをかけ、トラックとの車間距離が詰まっています。
白い車の前に落下物等があったわけでも無さそうですし、わざわざトラックの前に出てからブレーキをかけた理由が分かりません。
トラックの運転に苛立って?仕返しにわざと前に出てから急ブレーキをかけることで恐怖心を煽ろうとしたのかもしれませんね。
”煽られ運転”って・・・犯罪じゃないの⁉
被害者の車に車間距離を詰めていくのが煽り運転。
逆に被害者から加害者に車間距離を詰めるように仕向けているとみられることから、”煽られ運転”と名付けられたのでしょう。
としても、この煽られ運転、何らかの犯罪にならないのでしょうか?
巷でよく耳にするのが”危険運転”という言葉です。
今回の”煽られ運転”は該当するのでしょうか?
危険運転(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律 2条)
第二条
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
五 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
六 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第四条第一項に規定する道路をいう。)又は自動車専用道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第四十八条の四に規定する自動車専用道路をいう。)において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為
七 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
八 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為引用元:e-Gov法令検索
危険運転罪は元々刑法208条の2に定められていました。
当初は①酩酊運転、②制御困難運転、③未熟運転、④妨害運転、⑤信号無視運転の5つが処罰の対象とされていました。
その後、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律に編纂され対象も3つ増えて、上記のとおり8つの場合が犯罪になります。
”煽られ運転”はどの「危険運転」になる
映像で見る限り、白い車がトラックの前で急ブレーキをかけた納得のいく理由は無さそうです。
とするとトラックの進行を妨害する目的で「著しく接近」した場合にあたり、上記の第2条2項、妨害運転に該当しそうです。
もっとも妨害運転が成立するためには「妨害する目的」が必要です。
これは相手方の妨害を積極的に意図することを要求するもの。
たとえば、先行車を追い越そうとした際に対向車の接近にも気づき、「対向車の通行を妨害することになるかもしれない」と思いながら追い越しを開始、結果として驚いた対向車がガードレールに衝突する等しても「妨害運転」は成立しないと言われています。
この場合、追い越しを掛けた運転手は妨害を認識していたに過ぎず、積極的に意図していたわけではないからです。
本件でも、白い車の運転手に「妨害する目的」があったか否かが焦点になりそうです。
今回の件では急ブレーキをかけたトラックは積み荷が破損し、およそ3000万円の被害が出たとのこと。
危険運転の成否はまだ分かりませんが、今後の経過が気になる事件でした。
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